Sだと思う人、Mだと思う人のブレ
下の記事ではSMにまつわる嗜好について分解しました。
この中で、趣向の種別としてSM軸、D/s軸、エッチ軸を考えています。
真ん中をニュートラルとして、どちらか一方に偏ると「Sっぽい」「Mっぽい」という評価を与えるわけです。
うまく分解できているようですが、まだ問題があります。
それは軸のセンターラインをどう考えるのか?という部分です。
この記事では、個人ごとにブレる「S度」「M度」の指標を揃える方法を考えます。
まずはSとMの話
さて、凝った話をする前に「SとMの違い」について解説しておきましょう。
Sはサディスト、Mはマゾヒストの頭文字で、要は痛みを与える事が好きな人と、痛みを与えられる人が好きな人の事です。
これだけ聞くと異常(?)な感じがするのですが、最近では「支配する側 / される側」みたいな意味も含んできます。
Mさんは痛いことされてる時に自然と「やめて~」となりますが、そこでやめるとSMが終わってしまうので(笑)Sさんは自然と「ダメだ!」って感じになり、上下関係みたいなものが現れるんでしょうね。
詳しくは下記の記事で解説していますのでよかったらご覧ください。
わたしって、SMの世界の人から見てもMなの?
では本題です。
SMに興味があるけど、どうしよう…と迷う理由の一つは
自分って本当にMなのかな?
という疑問だと思います。
なるべく強い痛みに耐えられればM?
ご主人様のいう事に嫌でも従ってればM?
…SMは我慢大会ではありません。
たまーに
「そんなんじゃMとは言えない!」
なんて文句をつけてる人がいてちょっと怖いですよね。
じゃあ、どこからがMなの?という話ですが、これまたSM界隈お得意の「人それぞれ」になってしまっており、困ります。
もっと分かりやすい基準を作っちゃいましょう。
前の記事から、SM軸を取り出してみます。
![SM軸の図](https://blankzone.lsv.jp/wp-content/uploads/2020/08/SM_borderline.png)
両軸の端っこには、SとMがいます。
それぞれ
痛みを与えるのが好き ←—→ 痛みを与えられるのが好き
な人を指します。
簡単にするため、M側だけを例にとって考えてみましょう。
①はSとMのどちらにも属さない、ノーマルな人です。
また、④はどう見たってマゾです(笑)
実はちょっと痛いのが好き…という人は、真ん中から少しM側にスライドして②か③に来るでしょう。
これで傾向は表せています。
しかし、ほんのちょっと真ん中からズレただけで「おまえはMだ!」なんて決めつけるのもどうかと思いますよね。
先ほどから問題にしているように、実際には「Mっぽいと言えなくもないけど、まぁノーマルだよね」みたいな人が居るはずです。
図に表すと、こんな感じです。
![](https://blankzone.lsv.jp/wp-content/uploads/2020/08/SM_borderline2.png)
センターから少し余白を取って、ニュートラルゾーンを設けました。
これで
②の人はMっぽいけどまぁノーマル
③の人は④ほどじゃないけどM
という状態が表せました。
次の節ではいよいよ本題です。
②と③の間にある「境目」はどこにあるのか?という話です。
Mとノーマルの境目にあるのは「尊重」
たくさんの人に分かりやすく伝えるために、なるべく客観的な指標を持みたいところです。
でも、どうやって?
安心してください。
いまの世の中、やっていいことと悪いことを隔てる便利な指標があります。
それは「ハラスメント」です。
いきなりSMに似つかわしくない言葉が出てきましたが、ハラスメントの根本はかなり明快で
相手の権利が尊重されてるか?
にあります。
礼として分かりやすいのはセクハラ、パワハラです。
・性別が女性だから、差別したり性的対象にされる。
・立場が上だから、立場が下のヤツの気持ちを否定する。
また、ハラスメントの一種としては体罰も含まれます
・立場が上の人が、立場が下の人を叩く。
…何かに似てませんか?
これ、SMの世界じゃないですかね…。
尊重しないことに対する同意がSM
うまくあてはまりそうなので、煮詰めてみましょう。
ハラスメントとSMが似ているとして、別々に分かれているのは何故なんでしょう?
言い換えると、そこにどんな差があるのかというのがポイントになります。
これまた明確にいう事ができます。
相手の同意があるか
です。
自分が下として扱われること、痛みを与えられることに同意している人はMと呼ばれます。
でも、誰にでもそれを許していたら生活していけません。
そこで、同意の対象が限定されます。
この相手こそ「ご主人様」
つまりSMのパートナーです。
以上の考えを図にして整理してみましょう。
今回の軸は以下の2つです。
・尊重の度合い
・同意の度合い
![](https://blankzone.lsv.jp/wp-content/uploads/2020/08/SM_borderline3-1.png)
結構うまく整理できてるのではないでしょうか?
各ゾーンの解説です。
左側は健全な社会の構造です。
・恋人…お互いの同意があり、お互いを尊重している状態
・ご近所さん…お互いが厳密に何か決めているわけではないが、お互いを尊重しあっている状態
右側は問題のあるゾーンです
・ハラスメント…相手の同意もなく、権利を侵害している状態
・SM…相手の同意のもと、権利を侵害している状態
人と人との関係は、この図上を動き回っていることもわかります。
恋人同士が一時的にSMのゾーンに行くかもしれませんし、SMパートナーが普通の恋仲になることもあります。お別れすればご近所さん(実際近いかは分かりませんが…)になります。
また、パートナーを解消した後にSM的な行為をすればそれはハラスメントになります。
どうでしょう?
わりとうまく整理できているのではないでしょうか。
まとめ … 同意付きで相手の権利を侵害したらSM
冒頭リンクの「3軸記事」に当てはめてみても
身体的な侵害 … SM軸
行動、権利に対する侵害 … D/s軸
性的な侵害襲…エッチ軸
という感じで、それぞれの要素にフィットさせることができます。
「ハラスメント」はわりあい新しい概念です。
個人の主観が全く入らないとは言えませんが、社会的な基準が整理されてきています。
完全に個人任せの状態に比べれば、はるかに明確です。
昭和の時代から綿々と続いてきたSMの世界に、現代的な指標を持ち込むのはこの記事が初かもしれません。
でも、うまく取り入れられそうなことが分かります。
SMって言っても、いろんな性癖があったりプレイがあったりして自分がどれ好きなのか分かんない!という人は、いったんこの定義で想像してみてください。
あなたが気に入った特定の人にだけ、あなたの権利を明け渡したいと思いますか?
もしイエスなら、あなたはMであるという事ができます。したがって、SMの世界のどこかに、求めているものも転がっているはずです。
もう、自分がMかどうかで迷う事は無いですね。
あとは一歩踏み出して、目当てのものを見つけに行きましょう!
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