自傷癖。放り投げたい自分自身と、離れてくれない体

自罰的M女(アーカイブ)

自分の存在が、分からなくて

”前話:性を否定しながら性欲に負けるという矛盾”のつづき)
本能を否定することは、孤独の冷たさを知るという事でもある。
少女たちは、大人から「生きる理由」を探せと言われて途方に暮れる。

そんなもの、想像もつかない。
触れ合う肌のぬくもりに焦がれているような一人ぼっちの中で、まだ孤立しなくちゃいけないの?
別に、一番でなくたっていい。特別じゃなくたっていい。
私は、人並みの幸せが欲しいだけなのに。

交わす言葉に不信感がわく。
あの人たちの言っていることは、押し付けに過ぎないのではないか。
別に誰も、生きる理由なんて持っていないのではないか?

同級生たちは楽しそう。
毎日、友達とおしゃべりし、ちょっとしたことで笑い、まるでそれが「生きる理由」だからとすっかり納得しているみたいに、穏やかな日々を満喫している。

わたしはそれを楽しめない。
どうもそういう事じゃない気がしている。その楽しさは、空虚な気がする。
食べ終わったら無くなってしまうチョコレートのように、話していたあの子とバイバイして、分かれ道を別々に一歩進んだら、ただそれだけのことで、生きる意味なんて無くなっちゃうじゃない。

独りになっちゃうじゃない。

わたしは絶望する。
生きてる意味なんて結局見つからず、孤独を深めたあげく、一つの結論に達する。
もう、壊しちゃおっか

何を?
そこにあるだけで気が狂いそうになる、私の苦しみに、一番矛盾した存在。

自分の、からだ。

忘れかけていた体を思い出す手段

世の中には自傷癖と呼ばれるものがある。これは自分で自分の体を傷つける行為である。
カッターナイフなどで自分の腕を切るリストカット。
部位が変わればアームカット、レッグカットなどとも呼ばれる。

彼女らが行うこの行為の目的は「死にたい」ではない場合が多い。
「消えたい」である。

なんかこう、無くなってしまいたいのだ。
ぽっかりと。

無意識は、もちろん幸せを望んでいる。
時々それがプカリと浮かんできては、余計に彼女を悩ませる。

幸せなんて、知らない。
そんなの、今更出てきてもらっても、困る。

あなたはもはや人生なんてどうでもいいと思いながら、心のどこかで助けを求める。

だが、うまく出来ない。
言葉の上ではツライ、助けてを言えるかもしれないが

自分の、一番根っこのとこを相手に明け渡すことができない。

当たり前である。
あなたの孤独は、他人を信じることができないことから生まれているのだから。

そして、あなたは人に頼らないという、小さなプライドをかけて自分自身を罰する。
自分の弱さは、自分で始末しないといけない。

どうしても生きられないなら、自分で生きる理由を作る。
未来をずっと、楽観することなんてできない。
でも、せめて今この瞬間だけでも、なんとかしたい。

チキ、チキとカッターナイフを滑らせる。
皮膚を割く音なんて、イメージするような儚さも美しさもない。
切れない刃が、ところどころ引っ掛かりながら、赤い筋を作っていく。

ただ、のうのうと生きている自らの肉体に鞭打って、傷に、痛みに立ち向かう事で生きているという実感を思い出す。

あなたの意志とは無関係に体が送ってくるジンジンと響く痛みが、頭の奥を覚醒させる。
モヤモヤと渦巻いて、繰り返して、出口のない、ただひたすらに悲しい感情をあっさりと上書きして
ちゃんと目の前の出来事に、あなたの魂を引き戻してくれる。

ちゃんと、生きてた。
私の意志とは無関係に、体がちゃんと、生きていた。

その実感が、少しだけ救いになる。

壊したいと思ってやったその行為のあとに、自分自身への愛着を、ほんの少しだけ思い出す。

ボロボロに傷ついても終わらない日々

一度生まれた悩みは精神を苛み、だんだんと原因そのものを忘れ、漠然とした寂しさ、悲しさ、無力感に変わる。

人と交われないことが、孤独を余計に深める。

彼女らは常に悲しみに支配されている。
朝起きては人生を儚んで悲しみ、泣きそうになりながら、時間が過ぎゆくのをただ待っている。

無味乾燥な1分に耐えられず、こっそりと傷をこしらえては、つかの間の安心を得て、すぐに、また深い嫌悪感に陥る。

悲しみは倍増していく。

夜になると、一日何もできなかった自分を悔いる。
明日こそは、今度こそは。
そう思いながら眠りにつき、あまり幸せでもない夢を見て、朝、また悲しみに包まれながら目覚める。

責められているように感じる。
膨らんでいく胸が、うっすらと生えてくる陰毛が、不格好に大きくなる尻が。
子供から、女になってゆく。そのこと自体が。

世の中に、自分自身のすべてを否定されているような気がして。
それでも、自分が自分であってもいいという「赦し」を求めて、彼女たちは、自分自身を責め続ける。

あまりに深い、罪悪感に打たれながら。
tuki

コメント

18歳以上ですか? 一部 R18 向けの記述があります。 あなたは18歳以上ですか?
タイトルとURLをコピーしました