発達障害と性

発達障害と性 SMとこころ

好きという感情が分からない人

Mさんは、性癖がノーマルと異なっている人の事ですが、よくよく見ていると性癖だけでは片づけられない感じの「非ノーマル」な方も居ます。
Mさんなんだけど、その中でもMさんぽくないというか…

どこが異なっているかというと「愛情とか、人を好きという気持ち」に対してピンと来ていない点です。何ならセックスにもさほど興味がない場合があります。

このタイプについて、少し紐解いてみましょう。

発達障害と性

今までと同じように、精神の観点から少し考えてみましょう。
相手に興味を抱きにくい、という点ではSPDが当てはまりそうですが、ちょっと拡大して、近年よく聞く「発達障害」というものを考えてみます。発達障害とは、ベースに自閉症があるけれど、そう診断するほどでもないうっすらしたものを言います。

近年ではパーソナリティ障害のベースに発達障害がみられる、という考え方が主流になってきており、両者は切っても切り離せない関係になっています。
発達障害の中でも普通に(?)社会生活を送れている人は、高機能広範性発達障害と言われ、健常者と殆ど見分けがつきません。

最も困るのは対人コミュニケーションであり、定型(大多数の「フツウ」の人)とは異なるものの見方や、発信の方法を取るため疎外されやすいという特徴があります。
このため叱責や自信喪失に繋がる出来事も多くなり、2次障害として鬱が見られることも多いです。

他にも
・他者の感情を読み取るのに苦労する
・自分の感情を伝えるのに苦労する
・ルール化されていない事柄に対応しにくい
といった特徴を持ちます。

発達障害PDDと境界例BPD

発達障害PDDは近年研究が盛んになってきているジャンルで、境界例BPDと一見似たような特徴を示します

二つの分かれ目は対人コミュニケーションの様相です。
BPDは相手への過剰な期待からエキセントリックなコミュニケーションをとりがちなのに対し、PDDはコミュニケーションの方法がそもそも分からないため、距離感も近かったり遠かったり、結果的にエキセントリックに見える場合があります。

体験談でも時折描写がありますが「誰かが好きという感覚が分からない」という感想をもつMさんは存外多いです。
「それは真実の愛を知らないからだよ」と迫りたくなる諸兄もいるかもしれませんが、よくよく話を聞いてみても、どうもそんなニュアンスでない場合があります。

PDDにとっては、相手の理解や気遣いが重要なノーマル恋愛こそ難しく感じます。
一方で、SMという「関係性が明らか」な関係には比較的馴染みが良いようです。

上記のような理由から、いかにもSMっぽい痛いプレイはあまり望まず、薄い主従関係のような繋がり方に憧れる場合が殆どです。そのような関係こそ居心地がいいため、なんとなくSMの世界に居ついたりするのです。

こういうタイプも「ノーマルになじめないからSMに流れてきた」パターンの一つといえます。

アタッチメント障害

同じコミュニケーションの障害で、BPD、PDDと似たような特徴を示すものにアタッチメント障害があります。

PDDとの違いは器質的なものかそうでないかという点です。幼いころに愛情そのものをうまく学習できなかった場合にこの障害を持つようです。医学的マゾヒズムとも共通点が見られますね。

精神や心理学に関しては多彩な名前がついている一方で、実は同一のものだったり、一部かオーバーラップしている概念も多数あります。
実際、そういうものは時代の新しい知見を取り込んで更新されていきます。

障害というのはつまるところ「大多数と異なる状態」を指しており、性癖に関しても大多数と異なるものを選択しやすくなる可能性は考えられます。
特にSMは対象とする範囲が広く、考え方や接し方だけでも嗜好を表現できるので、相性が良いのかもしれません。(普通にできないからって怒られることもないし!)

SMもマゾヒズムも一次的なものではなく、何か別の要因があって2次的に嗜好を持つ。
こういう観点から、SMが再整理される日が来るかもしれません。

SMの現場?に寄せて

繰り返しになりますが「SM」がアブノーマルなプレイや関係性に都合よく使えるラベルとなりつつあり、ノーマルからはじき出されてきた人がとりあえず居つくのには都合がいい場所です。
サブミッシブという概念も普及してきて(実際の意味はともかく)D/sが「痛くないSM」のような柔らかい意味を表現できるようになり、ますますその裾野が広がっているかもしれません。

学問で研究されていたように、今までの「M」は愛情の交換方法が特殊なだけで、基本的にコミュニケーション能力があり、愛情への希望も持ち続けていました。

本記事では、異なる観点である「愛情そのものにピンと来ない人」や「コミュニケーション自体うまくできない人」について言及しています。こういった方たちが表舞台に出ることは普通ありませんが、体験サイトを運営していると珍しくないくらい、当てはまる方が居ることが分かります。

SMとこころカテゴリ でまとめられた記事群は、精神とSMについて網羅的に結びつきを考えたものです。
データそのものは限られた量であり、統計的な信頼性があるとは言えません。ですから、各記事が真に妥当かどうかの判別は難しいと言わざるを得ませんが、推論そのものは有効であると考えています。

本記事群が、悪意のあるラベリングに使われないことを祈ります。
また、僕自身の体験や洞察が、一人でも多くのMさんの幸せと、SMにかかわる方の知識の底上げに役立てられることを切に願います。

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