依存したい女 未羽(19)学生

体験女性ドキュメンタリー

「はじめまして。xx住みの大学一年生です。

ネットでSMに関する知見を書き込んでいる方がおり、そこから興味を持ちました。
その後、その方と直接お会いして主従関係のようなものに至り、何度かプレイを経験しています。
そこで、相手にビンタされること、頭を踏まれること、首を締められることなど苦しいことが楽しく感じる自分に気付きました。

自分のような方は他にもいないのか…と思っていたところ、このサイトに出会いました。
父性とSM的関係の話についてという記事が大変興味深かったです。
私の生い立ちを参照すると確かに思い当たるものがあります。
SMと父性に関して言及しているものは私が見た限りほとんどなく、先述の記事を見てなんだか救われるような、肯定されたような気持ちになりました。

SM的経験は決して多くないので、いろんなことを知って、試してみたいです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。お返事お待ちしております」

彼女からのメッセージはこのようにして始まる。
18歳にしてはしっかりした文体で賢さがうかがえた。
僕は長めの返信を書き、文章の良さを褒め、よければ生い立ちの部分についてもう少し教えてほしい、と要望した。

「文章、褒めていただけて嬉しいです。
もともと書きものが好きで、自分の考えを整理しながらゆっくり作っています。

私は6歳の時に両親の離婚で父に引き取られ、父方の祖父母に育てられました。
父は朝から晩まで働いていてほとんど顔を合わせることはなかったです。
祖父母が父の愚痴をこぼしていたのを聞いていたこともあり、私の中で父は家族でありながら蚊帳の外にいる他人のような認識でした。
何を考えているのかいまいちわからない、お客さんみたいな。

この父親観は後々異性に対する基準が極端に緩くなったり、異性に依存しがちになったりといった問題に響いているような気がします。

SMプレイ的に好きなこと、やりたいことは今のところ明確ではなくて…。なんか楽しそう、という好奇心でご連絡したのが本音です。
ハルさんにどこまで求めて良いのかわからず、これをしたいとははっきり言いにくいです。

両親は健在だし、それなりに育ててもらったし、自分の家庭が複雑だとは思いません。
だけど確かに、人に話す時少し説明がいる形だと認識しています」

彼女はなぜ僕と会いたがったのか?
好奇心だけなら相手は誰でも良いような気がするけど、理由はやっぱり父性とか依存とか、そういうものに詳しそうだからということになるんだろう。
僕に役割を設けるなら、その話をベースに、どれくらい新しい世界を見せてくれるのか?という部分なんだろう。

「ある程度関係が落ち着くと、私、一度相手から離れようとするんです。
そうすることで相手の反応、器の広さ、そして、果たして私は必要とされているのか?を確かめます。
ここで連絡が途絶えたら、相手から切られる前に離れられたということ。
求められたら、より依存してもいいということ。

相手を試すのは大変失礼でめんどくさいと思いつつ、それでも受け入れてくれる方を探しているんです。
求められている感覚が欲しいだけなんです。
ゆえに、求めてくだされば、自分が傷つかない限り応えます。

白いゾーンで紹介されていた心理テストやってみました。
私のやり方に問題があるのか、結果があんまりマゾっぽくないんですよね。
一連の試し行為と自己陶酔には関係があるのかなあと考えてみたり、興味深かったです」

彼女のテスト結果はこのようなものだ。

試し行動がある場合、典型的には境界性が高く出る。
あとは空想的なところも少し目立つが、多感な時期の女の子として納得がいくものだった。
全体的にハイスコアなので生きづらさを抱えているだろう。

やがて、彼女と会う日が決まると、彼女はアレコレと僕に選ばせた。

「髪型はどっちがいいですか」
「カラコンはどっちがいいですか」
「服はどれがいいですか」

スポスポと写真が飛んでくる。
デジタルネイティブの軽やかさがまぶしい。

「何でそんなに選ばせてくれるの?」
「だって好みに合わせた方が外さないし、お互い嬉しいじゃないですか」

未羽は外見をかわいく整えることには並々ならぬ注意を払っているらしい。
話の途中で僕が少しメイクの話をしたら、どうやら話が通じると彼女は認識したらしく、それだけで感激していた。

「それに、手の込んだものの方が壊されがいあるから」
「その通りだと思う。大事に手入れされてないものを汚してもしょうがない」
「見た目で判断する価値観、好きじゃないんですけど、無理しない範囲でできる手入れってきっとありますよね」
「見た目が全てじゃないけどね、見た目を良くするために本人の努力はあったわけだから、それはそのまま認めてもいいと思う」
「私が今より子供っぽい見た目だった時に、体型が髪がって色々言ってきた人がいて、メイク覚えたら手のひら返されて、なんか気持ち悪いなあと思って。可愛くなることは否定しないし自分を変えるという意味で確かに人生が豊かになるけど、必要条件にされるのなんかなあ」
「中身より先に可愛いかどうかの評価されちゃうくらいなら、余計なストレスを抱えないように外見は可愛くしといたほうがいいよね」
彼女は外見の手入れにいつも余念がなかった。


少し日にちを置いて、僕たちは街角で出会う。
ハーフツインにフリルのブラウス、ミニスカートにニーハイソックス。
地雷系ファッションに身を包んだ未羽がそこにいた。

「こんにちは」

カフェで少し話をする。
大学1年生。見た目とそぐわない思慮深さがそこに在る。

「本当は哲学をやりたくて、でも鬱になるって聞いたから笑
文学にしました」

話しているうちに少し慣れてくる。
文章ではずいぶん知的だったけど、話せばテンポ重視の現代っ子そのものである。

「性癖の話ってあんまりしてなかったね」
「たしかに。身近な人には話す気にならないというのもありますけどね
性癖こととかは言いにくくないですか?」
「言いにくだろうね。共通の話題にもなりにくいし」
「言ってないことで好きなことあるかなあ
ビンタ好きとかしか…どこを具体化すれば良いのか難しくて
あとは髪引っ張られるの好きかも
言葉でぐちゃぐちゃにされるのとかも」
「心も体もぐちゃぐちゃな中で見えた表情こそが、その人を代表する感情なんだと思います」
「個人的にはそういう時、相手に全部書き換えられて、自分が無になっていく感覚を覚えます。
Sの方から見たら、そんな状態でもその人らしい何かを見出せるものなんでしょうか」
「無になっていく人に何を見出すかというと、無なんです。
自分の色が無くて、誰かについていくのが似合う人。
そこに何もないんじゃなくて、そういうタイプの人なんだなってことを思います」

なるほどと未羽は頷き、少し間をおいて話し出す。

「…私は依存が好きなんです」
「依存?」
「はい。でも寄りかかるのとは違う。自分の中にその人を住ませるんです」

その話は、とても興味深く深かった。
彼女の望みは、依存したいという一点に集約されていた。
それ以外には彼女自身の欲望は特に出てこなかった。
誰かの一部になりたい、誰かの一部を取り入れたい。
それだけが彼女の望みだった。

依存、アイデンティティ、他人の中での自分。
他人のための自分。

時々、未羽は哲学的なことをいう。
それが10代の感性なのだと言えばそれまでだけど、彼女の語る内容はオリジナリティがあった。
どこかで聞いた流行りの価値観ではなく、彼女自身が考えて積み上げてきたことが分かるものだった。
少し突っ込んで聞いても矛盾せず、引き出してみると体形だっていた。

「文章にして書き出してみなよ」

僕がそれを勧めたのは体験が終わった後だ。

理解をするためには書きだすことが一番である。
彼女は幸い文才があった。文章もしっかりしてれば、書ききる力もあった。

結果、出てきたのはこんな文で、僕も多少は添削をしたけど彼女の文は殆ど地のまま残っている。

自分自身のことを口にできないとき、その時点での自分をまとめることが必要だと思う。
彼女は自分で文章にまとめきった。僕は彼女の望むをより深く汲み取ることができた。


「父は怒るかな」「母ならなんて言うだろう」

何かを決める場面では、多かれ少なかれそんなことを考える。
彼女が求めているのは父性だと言っていたが、話を聞けば母親もいない。

過酷な環境にありながら寂しさで失敗することはあまりない。
美味しいところはちゃんと食べて、自分のために生きていこうという今どきの強さがある。

未羽をコントロールするものは何もない。
自分自身の好奇心に任せて、経験を吸収して、自分自身を作り上げる。

彼女にとって、性はただの手段なのかもしれない。
人の本性を理解するのに、エッチほど分かり易いものはなかった。
言葉だけじゃない。体で全てを理解することができる。

甘えたくって、壊されたくて、壊されたいことすら甘えで。

「どうしてSMに興味を持ったの?」

僕は未羽にそう聞いたことがある。

「気をとにかく使うんです。
ノーマルなエッチは気を使いすぎて疲れて気持ちよくないです。
「なるほど、SMだと相手が好きなことをしてるから疲れないんだね。
「そうです。それに、気持ちいいことに何も考えないで従えって風潮じゃないですか。
私は何でも受け身だから、そういうのが安心する」

今日も一生懸命、大事に大事に手入れした自分自身を武器に、相手を取り込もうとする。
今日一番かわいい自分で会いたい。

そして、ボロボロにされたい。
自分が何とかして作った価値を粉砕されたい。
自我を無くさないと、私はずっと寂しいままだから。

「未羽。座るところはベッドじゃないよ」

僕は彼女を床に座らせ、足置きの代わりにする。
ふわっと表情が溶けて、崩れた笑みが現れる。

「踏んであげるね」

僕は彼女の身体を床に転がし、その下腹部を踏みつける。

「ううっ」

うめき声にしては甘すぎた。

「気持ちいいです…」

未羽は、踏みにじられる喜びを味わう。
自分と、相手がともに望む行為で、快楽と安心感を、貪る。

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