否定され続けると、それを自分の意見として取り込んでしまう話
SMという巨大なパイをさくさくと切り分けていくと、まだあまり語られてこなかった領域があることに気が付く。
このサイトではそれを ”自罰的M女” と名付けて一つのジャンルにしている。
もう少しキャッチーな名前があればいいのだが、思いつかない。
このタイプの女性は、平たく言ってしまえばメンヘラ的な気質のある女性である。
もともと、このブログの考え方の出発点は、性欲の抑圧をベースにしているところがある。親元に居る限り、いくら体が大きくなっても、娘らしく清らかで居続けなさい、という無言の圧力がある。だから、性欲があるのはふしだらだと思い込まされて鬱屈してしまうという話である。
こういう心理が当たり前になると、自分の本当にしたいことと、外に向かって発信する本心が別物になってくる。
問題なのは、メンタルに一番ダメージを与える行為というのが
「自分がしたいと思っていないことをさせられている」
であることだ。
自由な時間が無いからとか、疲れているから、病むのではない。
好きなことをやって忙しくなっているときは、案外耐えれるものである。耐えた結果も「あ、わたし結構頑張れるじゃん」なんて喜ばしくなったりすらする。
だが、やりたくないことは頑張れない。
あなたはあなたの気持ちに、本能に、フタをすることを頑張れない。
蓋をして耐えている間、どんどん元気はすり減っていき、ストレスが限界を超えるとだんだんと「病みポイント」が溜まっていく。
このポイントは、ストレスと違って休息しても直ちに回復したりしない。気分転換しても、温泉に入ってもどうにもならない。
なぜなら、ダメージを受けているのはあなたの考え方の方なのだから。
「性欲を抑え込みなさい」というのは他人から強制された価値観である。
自分自身ではそれが正しいと思っていないことを、しょうがなくやらされ続けた結果、脳みそは混乱を起こし、他人の意見を自分の意見だと勘違いし始める。
私は私の気持ちを大事にしちゃいけないの?
性って、そんなに良くないことなの?
という気持ちが、だんだんと
「性はだらしないし、それに溺れるのは良くないこと。それでも性欲が無くならない私は恥ずかしい」
というように変わってくる。
真面目で優しい人ほど、自分自身の方を変えていく。
思考の分かれ道に来た時、自分自身を押し殺す。
そのままにしておくと、いよいよ心のタガが外れ、あなたの中の「イイこと」の定義が崩壊していく。
それと同時に、負の感情も生まれる。
無意識までは騙せない。あなたは口に出す自分の意見と、心の中にある自分の意見が食い違っていることを、頭のどこかで認識している。
そして、知らぬ間に、無理解を押し付ける他人へ不信感を持つ。さらには、自分自身の気持ちに嘘をつく自分へ、不信感を持つ。
思春期…体の成熟と、切り離された性
葛藤が生まれるのはだいたい中学生か高校生くらいの思春期で、性に関して否定的なことを言うのは、多くの場合両親である。あるいは学校の教師かもしれない。
このタイミングで特に辛くならなかった人が
大人になってから性に悩むという事はあんまりない。
正しくあろうとする魂は、本音とタテマエを分けることを良しとしない。
自分の意見か、他人の意見を突き合わせ、しっかりとどっちかに統合しないと気が済まない。
自分が感じている性への興味は、そんなに悪いものなのか?
この問いへの答えは、思春期の間に出ることはない。
あなたは、知らぬ間に大きくなっていく胸や尻を奇妙に思いながら、いったい女であるという事に何の価値があるのだろう、と葛藤するかもしれない。
本来、人間の性欲のピークは中学生くらいの年齢だという説を聞いたことがある。
初潮を迎えるという事は、子供を宿す準備ができたという事で、それはセックスをする準備も出来ているという事に他ならない。自然界の生き物は、生殖可能になれば生殖するのだから、人間の本能も生殖に向けて活発になるはずだ、という理屈である。
この説を素直にとらえた場合、思春期の性欲を抑え込むのは不自然だと言える。
どれくらい不自然かは、男子中高生が無限の性欲を発揮していることと比べれば、たやすく想像できるだろう。女子中高生は、それが無いと言えるのだろうか?
大人になるまで食べれない果実は、腐らないのか?
大体の人は、上記のような葛藤を(少なくとも表面的には)うまくごまかしながら、大人になっていく。年を取るにつれ、性体験を増やし、少し汚れもするが、しなやかな強さを身に着けていく。ただ、一部には気持ちの処理ができないまま、うずくまってしまう人もいる。
性というものを肯定していいのか、否定した方がいいのか、はっきりしないのである。なんで年齢を経るだけで急に肯定されるようになるのか?その仕組みがよく分からないまま、自分が許容される年齢になっているのかどうかもよく分からない。
彼女たちは内省的である。
もともと繊細なところに、感情のアップダウンが激しくなり、それでも独りでなんとかしようとしてうまくいかず、時に自己放棄的な恋愛をして、果てしなく落ち込んでしまったりする。
暗い悩みの奥底に「性」があるなどとはとても言えない。
それは口にするのもよろしくない単語だと、刷り込まれているのである。なのに、自分自身の興味はそこから逸らすことが出来ない。
あなたは、清潔な魂のすぐ傍に、誰にも受け入れられない使用禁止の肉体を抱えながら毎日を過ごす。
「大人」になるまでこの地獄は続く。
大人になるまで?
あなたにとっての1年は無限とも思えるくらいに長いだろう。たった1日をやり過ごすだけでも、疲れ果ててしまうくらいなのに。
5年、10年待てというのは、死の宣告に思える。未来って、絶望の事なの?
どうして、みんな平気な顔をして生きていられるの?
(次話 ”性を否定しながら性欲に負けるという矛盾”)
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