心理学と性癖

SMとこころ

次は心理側の話です。

■意識と無意識

人間は、何でも考えて決めているように見えますが、その考え自体はどこから生まれてくるのでしょう?
答えは…無意識から生まれてきます。
無意識とは、言葉にできない感情や、思い出せないような過去の経験の積み重ねから自動的に生成されます。

無意識は、心理学の主要な考えの一つです。
個人のパーソナリティは、意識と無意識を合わせたものです。

■防衛機制

人はストレスを感じた時、どのように対処するのでしょうか?
素直に反省する人もいれば、ストレスの元になった事実を認めなかったり、怒りだしたりする人もいます。
気の利いたジョークでさっとかわしてしまうような、ナイスな人もいるかもしれません。

このような「対処の仕方」を概念化したものを防衛機制と呼びます。

防衛機制 - Wikipedia

どの防衛機制を選択するかは、その人の意識、無意識で決められています。
個人ごとに癖もあります。
デメリットの大きい防衛機制をよく選ぶ人は、人生うまくいかないなぁ…と悲しみに暮れる時間が多くなったりします。

■理想化と脱価値化

防衛機制の一つに、理想化と脱価値化があります。
これは他人(または物事)を
・理想的に良い
・まったく価値がない
の2値で考えるところが特徴です。

何事も、良い面と悪い面が共存しています。
従って、理想的←→価値ナシ…の間にも、どちらかというと良いとか、どちらかというと悪い…のような中間が存在しているはずなのです。
相手に多少悪いところがあったとしても、いい面が多くて、総合的に見て自分にプラスになるのであれば、一緒に居続けられます。

理想化と脱価値化で物事を見てしまうと、めちゃくちゃ距離感が近いか、全く話もにしない…というような極端な人間関係になります。
前記事で述べたBPDは、この防衛機制をよく用いるのが特徴です。

理想化と脱価値化 - Wikipedia

燃え上るような恋愛からさっと冷めた後、途端に相手の悪口を言い始めたりするのは脱価値化が起きたせいです。

■転移

過去に誰かと体験した感情や欲求を、別の人にも向けることを転移といいます。
例えばAさんとふとした一言がきっかけでケンカになったあと、Bさんに同じ一言を発したら、ケンカになるだろう…というような思い込みを言います。AさんとBさんは別人なので、同じ反応をするとは限りません。
失恋経験などからもよく転移がおきます。

転移がすべからく悪いものだというわけではなく、聞く側も真摯に対応することで、うまく気持ちを消化できる場合があります。

転移の力動
フロイトの1912年の技法論文である「転移の力動」についての要約と解説です。これ以前は、フロイトは転移を治療の抵抗として...

まずいのは、転移がうまくいかないと脱価値化する…というような思考パターンで、いつまでも救われません。

■共依存

SMカップルには、共依存のような状態になっている人が居ます。

個人の境界線 - Wikipedia

共依存患者は、しばしば自分のニーズよりも他人のニーズを優先し、他人の問題解決に夢中である。

wikipedia 共依存

SM的な関係では、それっぽい構図がよく見られます。
Sさんが居ないと自分が成り立たない依存的なMさんは結構いて、さらにはMさんが居ないと自分が成り立たないSさんというのも一部にいます。ここで共依存が発生している可能性があります。別にお互い同意の上ならいいじゃないかという気もしますが、関係がうまくいかなくなった時に脆弱です。
相手ではなく物事に対して動くのが共依存ですから、お互いが成長するという意味ではよくないわけです。

■認知の歪みと認知療法

適切でない防衛機制を使い続けると、ストレスを解決することが出来ず、鬱や依存といった病的な状態が固定されてしまいます。
この状態を「認知の歪み」といいます。
認知の歪みに自ら気づき、修正するというのは途方もない労力が必要です。
より効果を上げるために認知療法という手法があります。
認知療法も様々な手法があるのですが、基本的には受ける側が自分の感情を説明し、指導側が合理的か非合理的かを判断、まずければ修正する…といった手順になります。

自己肯定感の低いMさんに対し「ご主人様」は間接的に認知療法的に振舞っている可能性があります。

■トラウマと防衛機制

性的虐待を受けた女性が、逆に性行為を拒まないいわゆる「ビッチ」になることがあります。
これは性行為のハードルを下げることで、その価値を切り下げる効果があります。
切り下げておけば、性的トラウマになったような事実も、実際には大した意味がないのだという解釈ができ、ストレスを避けることができます。

マゾヒストの中には性的虐待や、暴力を受けた過去を持つ人がいます。
SMを通して暴力に対する価値の切り下げを行い、過去に適応する…というパターンが考えられます。

■ナラティブセラピー

トラウマに関しては、ただ話すだけでもセラピー(治療)になる、という考え方もあります。
カウンセラーの存在はまさにナラティブセラピーですし、当サイトの悩み相談、体験相談もこれに近いものがあります。
過去を共有することで楽になることもありますから、興味があればぜひご利用してみてください。

ナラティブセラピー - Wikipedia

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